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オレがきっぱりと断言すると、クレイが心配げな顔で見つめてくる。
「無理しなくていいんだぞ。俺に気兼ねは不要だからな」
実に過保護だ。
まるで子どもを心配する親のようだ。
そんなにオレが信用できないのだろうか?
「無理してないさ。そもそも、向こうだって何かしらの隠し事をしていると思うし、人と人の関係で双方がオープンなことなんて、普通はありえないだろう」
オレの返答にクレイが驚きで目を丸くし、ぼそりと呟く。
「リデルが、まともなこと言ってる……」
む、ちゃんと聞こえてるぞ。
失礼な。オレだって、ちゃんといろいろ考えてるんだからな。
その気になれば、ルマの事件の時のように、頭脳を駆使して難問だって解決出来る。
「大体、クレイはオレを子ども扱いしすぎるんだ。オレだって、もう一人前の立派な大人なんだ。もっと信用してくれてもいいじゃないか」
「立派な大人ねぇ……」
「ど、どこを見てんだ、クレイ。一度殴られないと気が済まないようだな」
オレの一部分にさりげなく目をやったクレイに制裁を加えるべく、ゆっくりと近づくと、
「お二人とも、こちらに居られましたか。馬車も馬も下船して、出発の準備ができたようですので、船着場にお戻りください」
オレ達を探していたらしいソフィアが顔を出す。
「あ、ごめん、ごめん。今すぐ、そっちに行くよ」
オレはクレイとの話を打ち切って、ぷんすかしながらソフィアの後を追った。
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