ロスラム傭兵団

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   バルボフと呼ばれた男は、巨体に任せた攻撃を得意とするのか、武器も持たずに両手を広げ、オレに向かってゆっくりと近づいて来る。  一般人なら、そのリーチの長さで容易く捕まえられて、その腕力の餌食となるだろう。  まあ、オレの素早さなら簡単に避けられるだろうけど、あんな奴に抱きすくめられるなんて、想像しただけで鳥肌ものだ。  正直な話、今のオレだったら真正面から力比べしたとしても余裕で勝てると思う。  もちろん、こんなに衆目を集めるような場所でわざわざ目立つ行動を取るつもりは全くないけど。  そんなことを考えているうちにバルボフが目の前に立っていた。  そして、大きなモーションでオレを捕まえようと両腕を伸ばす。  オレはその寸前でひょいと避けて後方に下がった。  空を切った両手にバルボフは一瞬、唖然とした顔をするが、すぐに気を取り直して、再度オレに向かって腕を伸ばす。  けれど、先ほど同様に紙一重で避けてみせる。  それからしばらくは同じことの繰り返しとなった。  オレがわずかな動作で避けるため、周りからは大人が手加減しながら小さい子どもと鬼ごっこをしているように見えるようで、住民からくすくす笑いが起こる。 「バルボフ! 何をやってやがる。手を抜くのも大概にしろ」  苛ついたオダンがバルボフに発破をかける。  その声にバルボフは顔を赤くして、いっそう捕まえようと躍起になったが、指一本触ることさえできない。  とうとう、疲れ果てたのか尻餅をついて肩で息をしている。 「バ、バルボフ……貴様!」 「お~い、ちょっと待ってくれ。そこで揉めてる人達!」  オダンが怒りのため、歯軋りしながら怒鳴ろうとした瞬間に、この場に割って入ってくる者がいた。
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