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「わかった。今、聞いたものを用意すればいいんだな」
「ああ、頼む。できるだけ急いでくれ」
クレイに念を押されると、ディノンは「任せろ」と胸を叩き、部屋から飛び出していった。
「クレイ……いったい、何を企んでいるのかな?」
オレがじと目で見つめると、わざとらしく神妙な顔つきしながら、手を振って否定する。
「ないない、何も企んじゃいないさ」
嘘付け! こういう顔の時のクレイは絶対何か企んでいるし、しかも大体はオレに対して悪戯しようとしてる時と相場が決まっている。
「それより、ヒュー。今回も悪いが、キースで通してもらうことになりそうだが、構わないか?」
オレの追及をはぐらかすようにクレイはヒューに話題を向ける。
「私は構いませんよ。ただ、こういう場所です。私のことを知っている人間が、きっといると思いますので、すぐに露見するかもしれませんよ」
「大丈夫だ。それについては、すでに手は打った」
自信満々に答えるクレイに、ついオレは皮肉を言ってしまう。
「さっきまで、あんなに反対してたのに、ずいぶん乗り気じゃないか」
「やると決めたら、楽しまなけりゃ損だろう」
「それはそうだけど……」
「まあ、そう言うな。前回のルマの武闘大会だって、本当は出たかったのを、ずいぶん我慢したんだ。それが、今回はお前と一緒に出られるんだから、テンションが上がるに決まっているだろう」
何か可愛らしいことを言っちゃってるけど、騙されないからな。
「さて、出ると決めたからには、さっそくアルサノーク傭兵団に加入して大会参加の登録をしないとな。俺はサラへの出発するという伝言を訂正しに行くから、リデルとヒューはネフィリカのところへ行ってくれ」
クレイはそう指示を出し、話を切り上げようとする。
そうはさせまいと、オレがどんなに問い詰めても、結局その良からぬ企みについて、クレイは決して白状しなかった。
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