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「それでは皆さん、一回戦です。頑張りましょう!」
団長のネフィリカが試合前に声を上げる。
緊張のためか、わずかに声が上擦っている。
オレ達は「おお―っ!」と返しながら、彼女に続いて武闘場に入る扉の前へと並んだ。
あの後、アルサノーク傭兵団に加入したオレ達は、すぐさま武闘大会に参加登録したのだけど、本当に締め切り間際だったようで直に参加申し込みが締め切られた。
そして、大会が始まるぎりぎりまで集団戦での連携等の練習を行ったのだ。
意外にもネフィリカと同様にガイウスもそれなりの腕を持っていて、ユールが健在なら傭兵団としてはかなり上位の実力があっただろうと推察された。
これなら、人数が足りていればオレ達が加わわらなくても上位入賞を望めたかもしれない。
そんなことを思い返しながら、オレは自分の格好に目をやり、ため息をついた。
「クレイさんクレイさん、どうしてこうなったか教えてくれると有り難いんだが……」
オレのすぐ横で模擬剣の握った感触を確かめているクレイに、つぶらな瞳で尋ねてみた。
「ん、何のことかな?」
白々しく、とぼけやがって……。
「寝惚けるな! オレのこの格好は何なんだ」
クレイに詰め寄った今のオレの格好は、フリルのいっぱい付いた白を基調としたショート丈のミニワンピースの上に、申し訳程度に防具としてブレストプレートを付けた、およそ武闘大会に出場する出で立ちとは思われなかった。
その上、顔にはご丁寧にも舞踏会用の仮面まで着けているので、どちらかと言えばそっちの舞踏会に出るのかと誤解されそうな格好だ。
「何って、『白き戦姫(いくさひめ)』の格好だけど?」
そう、クレイの言うとおり、その格好はオレが帝都の闇闘技大会に出場した時に正体を隠すために着たものと同じだった。
もう二度と着ることのない恥ずかしい格好だと思っていたのに、まさかこんな公衆の面前で再び着ることになるとは……。
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