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「それはわかってるけど、何でオレがこんな格好に?」
「仕方ないだろ、リデルがこれ以上有名になるわけにはいかないんだから」
むう、それは事実なので否定はできない。
「いいじゃないですか、リデル。私に比べたら、ずっとマシです」
反対側からヒューが珍しく情けなさそうな声を出す。
そちらに目を向ければ、いつもとは全く違うヒューの姿があった。
例の皇帝神具であろう銀の甲冑は着けずに、革鎧の要所要所に銀色の金具を取り付け、一見すると銀色の防具を着ているように見える代物を着込んでいた。
いつもの銀の甲冑に比べればマシだが、それでも十分目立っている。
というか、見ようによってはかなり痛い格好と言えた。
「よく似合ってるよ。『白金(しろがね)の竜騎士』さま」
ニヤニヤしながら、クレイがヒューの登録名を告げる。
「真剣に怒りますよ。恥ずかしくて、顔から火が出そうになります」
「だろう? だから、ちゃんと顔を隠すようにしたのさ」
そう、さらにヒューはフルフェイスのヘルメットを着用していた。
それも銀色の竜をかたどったデザインで見るからに安っぽそうだ。
確かに、この格好であの二つ名は心が折れる。
それに比べたらオレの方がまだマシ……いや、危ない危ない。もう少しで、クレイの術中にはまるところだった。
「君達、戦いの前によくそんな軽口が叩けるな」
ガイウスが呆れた様子でオレ達を見る。
一緒に練習したおかげで、奴のオレ達の評価はかなり良くなっていた。
やはり、オレが女とわかったのが大きかったようだ。
「皆さん、扉が開きます。お静かに!」
ネフィリカの言葉に続いて、ゆっくりと闘技場の扉が開いた。
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