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貴族にすることを諦めた三世は、その代わりに勅許状を与え、皇帝の身辺を警護する役目を命じた。
世に言う『皇帝直衛傭兵団』である。
以後、皇帝の身辺警護は皇帝直衛傭兵団が担うこととなった。
さらに、帝国に事ある時には傭兵団を束ねる権限も勅許状には付与されていたのである。
時代は流れ、デュラント家に皇帝の家系が移った際に、直衛傭兵団は解体され、一傭兵団に戻ったが、その権威は今も連綿と息づいていると言う。
そのせいかはわからないが、ネフィリカの父親である先々代のエイナス・アルサノーク団長もオスフェルト伯爵に重用されていたのだそうだ。
「……と、まあこんな感じだが、間違ってないか?」
「はい、そのとおりです。よくご存知ですね、驚きました」
クレイがネフィリカに確認すると、目を丸くしながら頷いた。
相変わらず、物知りな奴だ。
「で、質問なんだが……皇帝勅許状は、今誰が持ってるんだ?」
クレイは笑みを消して、ネフィリカを見つめた。
「それは秘密です。……と言いたいところですが、誰もが知っていることなので、お教えします。勅許状は団長が代々引き継ぐことになっていますので、兄から引き継いだ私が所有しています。ただ、誰にもわからないところに隠してはありますが……」
ロスラムがネフィリカを欲する理由はわかったけど、そんな古臭い書状一枚にそれだけの価値があるんだろうか?
「あと、もう一つ。勅許状には、その事ある時に備えて、隠し財宝の位置が記されているっていう噂は本当かい?」
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