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なに、財宝とな。
オレが目を輝かせるとネフィリカは苦笑いする。
「全くのでたらめです。よく耳にする噂ですが、そんな都合の良い話なんてありません。そのお金があったら、アルサノーク傭兵団は今のような体たらくにはなっていないでしょうね」
なるほど、ネフィリカの言葉にも一理ある。
それに、隠し財宝といのは、さすがに現実離れし過ぎていると思う。
「ま、必ずしも嘘とばかりは言えないんだが……」
クレイが小声でぼやくのをオレは聞き逃さなかったけど、あえてこの場で追及するのは避ける。
どうせ、クレイのことだ。何らかの裏情報を持っているに違いない。
あとで、きっちり聞かせてもらおう。
とにかく、アルサノーク傭兵団が由緒正しい権威のある傭兵団であることと、それを取り巻く状況については理解した。
さらにネフィリカの弁によれば、ロスラムは廃業寸前のアルサノークの名跡(みょうせき)を惜しみ、善意と義侠心からネフィリカを娶り、アルサノーク傭兵団を再興しようしている――そういう触れ込みで、ネフィリカに婚儀を持ちかけているのだそうだ。
なので、武闘大会でアルサノーク傭兵団が上位に入賞すると、その前提が崩れ、具合が悪くなるため、大会参加を執拗に妨害してきたのだと言う。
となると、今後もロスラムからの妨害や嫌がらせは続くと予想され、特にネフィリカの安全には細心の注意が必要だという結論に至る。
ソフィアには悪いけど、当分はネフィリカの護衛役に徹してもらうことになりそうだ。
「ねえ、ネフィリカ。もし良かったら、しばらくオレ達と一緒に寝泊りしないか? せっかく仲良くなれたんだし、もっとネフィリカのこと、よく知りたいんだ」
「え! そ、そんな……」
オレの言葉に、お酒で赤かったネフィリカの顔がますます赤くなる。
あれ、オレ何か変なこと言った?。
「ダメかな?」
「そ、そ、そんなことありません! こちらこそ、ぜひお願いします!!」
オレの手を急に握り勢い込んで返答するネフィリカの後ろで、ソフィアが生温かい目でオレ達を見ているのが印象に残った。
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