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「何も仕事してない気がしてならないんだが……」
不機嫌そうにガイウスが呟いた。
「奇遇です。私もそう思いました」
こちらは申し訳無さそうな態度だ。
実際の話、前衛三人の馬鹿みたいな攻撃力のせいで、試合があっという間に終わってしまうため、後衛のネフィリカとガイウスにしてみれば、何もしてないような感じになるのだろう。
オレ達は2回戦突破のお祝いと反省会を兼ねて、再び『桃色の口付け亭』の酒場で食事をとっているところだ。
「いやいや、そんなことないって。ネフィリカは大将なんだから守られるのが当然だし、ガイウスがネフィリカをしっかり守ってくれているから、オレ達も前に出て行けるんだよ」
「ふん、物は言い様だな」
慌ててフォローするが、ネフィリカはともかくガイウスは納得しているようには見えない。
オレとしては本心でそう思っているのだけど、そこそこ腕に覚えのあるガイウスとしては、体(てい)のいい言い訳にしか聞こえていないようだ。
まあ、力任せのオレとは違い、クレイとヒューの剣技は洗練されていて、見ている者の目を奪う代物で、同じように剣を生業としているガイウスにとっては、はなはだ面白くないに違いない。
「じゃあ、次の試合。俺と位置取り替わるか?」
オレに不満を言うガイウスに対し、クレイが不敵な笑みを浮かべて提案するが、しばらく沈黙した後、ガイウスはその案を辞退する。
全く人の悪い奴だ。クレイだからこそ、あの化け物めいたヒューと連携できるのであって、そこいらの人間が替わることができるレベルではないのだ。
この場にいる者なら、皆わかっている事実だけど、あえて口には出さなかったのに……クレイの虫の居所、かなり悪かったのだろうか。
「まあまあ、二人ともせっかくの祝いの席じゃないか。喧嘩などせず、仲良く飲んだらいい……何なら奢っても構わないぞ」
オレ達のおかげで、懐が暖かくなったらしいサラがニコニコしながら仲裁を買って出る。
クレイとガイウスが、げんなりした顔でそれに答えないでいると、今まで黙っていたソフィアが自分の意見を述べた。
「でも、ここまで勝ち進むと、そろそろ何か動きがあってもおかしくないですね」
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