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ソフィアが危惧するのは、もちろんロスラム傭兵団の動向だ。
試合前の予想通り、ロスラムも順当に勝ち進んでいる。
両者とも、あと二回勝てば準決勝で当たることになるだろう。
確かにそろそろ動きがあってもおかしくない。
「ソフィアの言うとおりだと思う。みんな、身の回りには十分注意した方がいい。特に不用意に出歩いたり、単独行動は避けるようにしよう」
「言ってるお前が一番心配だと思うぞ」
オレが注意を呼びかけると、クレイが疑心暗鬼な目でオレを見つめ、ヒューとソフィアも同意の表情を見せる。
「オ、オレだって、もう大人だからそれぐらい我慢できるさ」
失敬な、オレだって自制心はあるんだからな。
オレが鼻息荒く、断言するとネフィリカが口を開く。
「そうですね、リデルの言うとおり注意することにしましょう。ロスラムのベンゼル副団長にも、これ以上ご迷惑かけられませんし、私達で気をつけるしかありませんね」
「そうだな、あの人にはずいぶん世話になったからな」
「ええ、とても立派な方ですよね。ロスラム側についたの残念でなりません」
な・ん・だ・って……?
あいつが、立派だって……。
「ネフィリカ……今言ったのはドゴス・ベンゼルのことか?」
「ええ、そうですが、それが何か……?」
「――オレの前で、その名前を口にするな!」
いきなり立ち上がって激高したオレをクレイが抱きとめるように押さえ込むと耳元で囁く。
「リデル……落ち付け。まずは、ゆっくり息を吐け」
「でも……でも、あいつが……」
「大人になったんだろう。自分の都合だけで怒るな。相手をよく見てみろ」
クレイに言われて、ネフィリカを見ると口を押さえて怯えている姿が目に入る。
「あ……ああ……オレ……」
そのとたん、血が登った頭が一気に冷める。
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