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「ベンゼルさん、どうしてここへ?」
ちょうど話題にしていた人物の登場にネフィリカが驚きのあまり立ち上がると、ドゴスは立たなくとも良いという仕草を見せ、ゆっくりと近づいてくる。
そして、ネフィリカに勧められ、空いている席に腰掛けた。
「ご無沙汰だね、ネフィリカ。あいかわらず無茶をしているようだね」
爬虫類顔の三白眼に、いつもの薄気味悪さがなく、どことなく柔らかい印象を受ける。
ネフィリカ達に見せる『良い人』に擬態しているのだろうか?
「はい、ドゴスさんにもご迷惑おかけして、申し訳なく思っています」
「それは構わないが、そろそろ限界だと思わないかね」
「……」
ネフィリカが黙り込むと、周囲に目を向けたドゴスが、やっとオレ達に気付く。
正確にはクレイにだ。オレに向ける視線は見知った者に対するそれではなく、ただ並外れた美貌に対する驚きのみが感じられた。
まあ、男の頃のオレとは、顔の造りは似ているが、受けるオーラが全く違うらしいので、わからなかったようだ。
そう言えば、弟のゾルゲンも再会した時、オレとは気付かなかったっけ。
「君は……ひょっとして、クレイ君か?」
「ええ、お久しぶりです。ドゴス副団長」
クレイはにこやかに応対しながら、テーブルの下でオレの両腕を押さえて暴発しないように気をつけてくれていた。
オレはドゴスの顔がまともに見られず、ずっと俯いている。
目を合わせたら、何をしでかすかわからないからだ。
「センテノクス動乱以来です……」
クレイは口元に笑みを浮かべながら、鋭い目と静かな低い声で言った。
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