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「確かに、あのとき以来だね」
クレイの無言の圧力に動じず、ドゴスは自然体で答える。
「君の言いたいことはわかるが、この場で話すことではないと思わないか。無関係な人間に聞かせるのは、君にとっても不本意だろう?」
「それは認めましょう」
「なら、その話はここまでだ。また、君とは話し合う機会を設けることを約束しよう」
そう言うと、ドゴスは隣にいるオレへと視線を向ける。
「それより、クレイ君。そちらは奥さんか彼女かい? 良かったじゃないか、正しい倫理観に戻ることができて。一時は、君も弟も人として間違った方向に進むんじゃないかと真剣に心配したもんだよ」
「…………」
さすがのクレイもバツの悪そうな顔をしている。
「そうだ……君がご執心だったのは、確か教導班のデイルの息子のリデルとか言ったかな?」
その名をドゴスが告げると、その場にいる当事者以外の人間が一斉にオレの方を見る。
その目は、そんな昔から男装していたのかという、あらぬ誤解をしているように見えた。
「その話は、もういいだろ。さっさとここに来た目的を果たしたらどうだ」
さりげなく、クレイは話の先を促した。
「ああ、君の言うとおりだ。その話も次の機会にゆっくり話そう……さて、ネフィリカ。私がここに来た目的なんだが……」
何とか誤魔化せたと思って、ほっとしていると、ドゴスはいきなり核心に触れてきた。
「アルサノーク傭兵団のことなのだが、そろそろ武闘大会の出場を辞退してはどうかと提案しに来たんだ」
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