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ロスラムからの動きがあるだろうと、先ほど話してはいたが、ここまでストレートな介入があるとは、さすがに想定しなかった。
一瞬の沈黙の後、ネフィリカは強張った表情のままで、ドゴスの真意を確かめる。
「あの……それはベンゼルさん個人の考えですか? それともロスラム傭兵団の副団長としての提案ですか?」
ネフィリカにとっては重要な問題かもしれないが、どちらであってもアルサノーク傭兵団に益となるような話ではない。
オレとしては、どんな美辞麗句が並べられようと、有利に思えるような提案でも、決して受けるべきではないと確信していた。
「もちろん、個人的な……誼(よしみ)を通じている友人としての提案だ」
「では、なぜ……」
「辞退を勧めるかだね?」
「はい」
「正直に言うと、ここに来たのは私の独断なのだ。一刻も早く、君達の置かれている状況を理解してもらって、賢明な判断をしてもらいたくてね」
ドゴスの話にネフィリカが怪訝な顔をすると、奴は柔和な表情を崩さずに補足の説明を加えた。
「実はね。団内ではすでに強硬な意見がいくつも出ているんだ。なんとか抑えているが、このままでは、君達にとって最悪な状況を招くのは必至だ。なので、こうして団員達の目を盗んで、ここにやって来たんだ」
その話が本当なら、ドゴスという人物は義理堅く理知的で心優しい人柄ってことになるだろう……本当ならだけど。
「悪いことは言わん。考え直してはくれまいか? 私としては娘のように思っている君が、みすみす不幸に陥るのを黙って見ていられないんだ」
ドゴスの親しみが込められた言葉にネフィリカは困惑した表情で沈黙する。
その代わりではないが、オレはすっと立ち上がると反論の口火を切った。
「少しいいですか?」
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