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や、やばい。さすがに感づかれたか。
焦ってドゴスを見ると、奴は咎めるような視線をクレイに向けていた。
「クレイ君、他人の嗜好をとやかく言うつもりはないが、あまり良い趣味とは言えないな」
「どういう意味だ」
「昔の恋人と同じ名の女性と付き合うとか、偶然にしても良い印象は受けないね。もしかして、どことなく雰囲気も似ているし、強制的に同じ名を名乗らせてるなんてことはないだろうね」
「な……」
「馬鹿なこと言うな! クレイはそんなこと絶対しない。オレはずっとリデルのままだ。あの時と外見は変わったけど、中身は少しも変わっちゃいない」
ドゴスの言い草がクレイを絶句させるのを見て、かっとしたオレは思わず口走ってしまってから、冷や汗をかく。
しまった。また、やっちまった。
せっかく誤魔化していたのに、これじゃバレバレだ。
オレが恐る恐るドゴスを見ると訝しげな顔をしていた。
「……よく言ってる意味がわからないのだが。結局、他人の空似で、なおかつ偶然、同じ名前ってことでいいのかね」
…………バレてない?
って言うかリアクションが以前のゾルゲンと全く同じだ。
兄弟だから思考が同じなのか、単なる馬鹿なのか判断に窮する。
「そ、そんなところだ。それより、結論は出たんだ。あんたの提案は呑めないってことさ」
オレが慌てて話題をそらすと、ドゴスは頷いてネフィリカに向き直った。
「君達の言い分はわかった。ネフィリカ、団長としての君の意見も同じと考えて良いのかい?」
「はい、ベンゼルさんには、いろいろ助けていただいたのに、恩を仇で返すような真似になってしまって申し訳ありませんが……大会出場を続けたいです」
ネフィリカの凛とした宣言にドゴスがどう反応するか、オレは身構えて様子を窺った。
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