ドゴスの提案

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「そうか……それが君達の結論なんだね。わかった、君達の想いを尊重しよう。立場的には厳しいが、出来る限り君たちの事を支援しようと思う」  え……何だって?  身構えたオレはドゴスの発言に混乱する。 「さしあたって、これから注意すべき点をいくつか述べよう。まず、第一に単独行動は避けることだ。君等は確かに強いが、集団で襲われたらひとたまりも無いだろう。だから、近距離に赴くときでも複数人で人気(ひとけ)の多い道を選んで行動すべきだ」  な、何を言ってる? 「次に出されたものを迂闊に飲んだり食べたりするな。この宿屋内なら大丈夫だろうが、一歩外へ出たら毒物や睡眠薬などの混入を疑った方がいい。ロスラム傭兵団の協力者がどこにいるかわからないからな。信用の出来る場所以外の飲食は避けた方が賢明だ」  ド、ドゴス? 「最後に人混みには注意したまえ。闘技場で他の試合を見る機会があるかもしれないが、一般観客席は利用すべきではない。いつどこから毒薬の塗られた短剣が狙っているかわからないからだ。もし、どうしても観戦したいなら、高くても特別席の利用を勧める」  オレが唖然とした顔をしていると、ドゴスは心配げな表情でオレ達に告げる。 「大体、こんなところだが、ロスラムは君達が思っている以上に狡猾で危険な男だ。私としては逆らうのは得策でないと思うが、君達が決めたことだ。異論をはさむつもりはない」 「あ、ありがとうございます。ベンゼルさん」 「いや、たいしたことではないさ。ネフィリカ……私は君のお父上に返せないほどの恩義を受けている。これくらいは当たり前のことだ。さて、ずいぶん長居した。これ以上ここにいるとロスラムの疑念を持たれるかもしれない。そろそろ、お暇(いとま)しよう」  そう言うと椅子から腰を上げ、オレ達に目礼するとドゴスは立ち去ろうとする。  ネフィリカも慌てて席を立つと、ドゴスを宿屋の出口まで送って行った。念のため、ソフィアも付き添っていったが。 「どうした、リデル。幽霊にでも会ったような顔をしてるぞ」  茫然自失のオレにクレイが皮肉めいた口調で声をかけるが、当のクレイも半信半疑の表情だ。
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