2926人が本棚に入れています
本棚に追加
/1300ページ
「今の話、どう思う?」
ドゴスの言動に感激しているネフィリカを横目にオレはクレイに問いかける。
「そうだな。彼の真意がどこにあるかはわからないが、言っていることは至極まともだと思うぞ」
確かに言っていることは的を射ていたし、ネフィリカに対して誠意も感じられた。
けど、それがどうにも納得しがたい。
先入観のせいで、客観的に見ることができないのだろうか。
「リデル。気を悪くするかもしれないが、当時のドゴスの評価は決して低くなかったと俺は記憶している。彼の第一印象やゾルゲンのせいで人望はなかったが、能力は高く副団長の職務をきっちりこなしていたはずだ」
「……そうかもしれないけど、あいつはオレ達がいた『ファベリオ傭兵団』を壊滅させた張本人だぞ」
「それは否定しないが、俺達は当時の状況のすべてを把握しているわけじゃない。ドゴスにはドゴスの言い分があるのかもしれない」
「……ごめん。今は素直にその意見に同意できない」
「わかってる。お前の立場を考えたら、すぐに納得できる問題じゃないからな。まあ、昔話を話し合う約束も取り付けたことだ。機会を見つけて、腹を割った話をしてみるさ」
「それについては、クレイに任せるよ。今のところは積極的に歩み寄ろうとは思っていないから」
オレが拒絶の意思を明確にすると、クレイは「任せとけ」という風に大きく頷いて見せた。
「ところでクレイ、話は変わるけど、ちょっと気になってることがあるんだけど……」
「ん、何だ?」
「この間、ネフィリカが勅許状の話をした時に秘密の軍資金の噂を聞いただろう」
「ああ、そんな話をしたな」
「ネフィリカはすぐに否定したけど、お前ぼそぼそと何か言わなかったか?」
「はて、何のことやら」
「クレイ……」
オレがにっこり笑って握り拳をつくると慌てて弁解する。
「わ、わかった。折を見て話すから、落ち着いてくれ。この場では、ちょっと不味い」
クレイはネフィリカ達に視線を向けると口を濁したので、それ以上の追及は諦めるしかなかった。
最初のコメントを投稿しよう!