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三回戦が始まる直前にソフィアから報告があった。
求人を募集していない『桃色の口付け亭』に職を求めてきた人間がいたとのことだ。
しかも別ルートでの紹介で3名もいたそうで、二人は人手が足りていることを理由に断り、一人は有力者からの斡旋だったので、採用して監視をしているとの話だ。
ドゴスの言ったとおり、宿屋にも仕込みを入れようと画策してきたようだ。
『桃色の口付け亭』がクレイ絡みの店でなければ、危ないところだった。
けど、その代りと言っていいけど、ロスラムの刺客を心配しなくていい代わりに、別の心配が必要となってきている。
何故か、妙に従業員のクレイとオレを見る目が生暖かい気がしてならない。
陰で『若奥様』なんて言ってるのが聞こえたりするのも、勘弁してもらいたいと強く望む。
「ドゴス副団長の危惧は正しかったようですね。クレイ様も外での……特に闘技場では注意を怠らないよう願います」
ソフィアの進言にクレイも大きく頷く。
「ああ、了解だ。それと大変だとは思うが、ネフィリカ達の警護をよろしく頼む」
「畏まりました。『桃色の口付け亭』からも手を借りているので、抜かりはありません。怪我を負っているユールさんもネフィリカさんの知人の診療所に移しましたので、問題ないと思います」
「そうか、いろいろすまないな」
「いえ、その代わりクレイ様にはリデル様をお願いします。お傍にお仕えできないのが残念でなりません」
「わかった。けど、それが一番大変かもしれないな」
「はい、それも魅力です」
あの……本人が聞いてるんですが……。
そういう恥ずかしい話は、オレのいない所でして欲しいなあ。
「それでは、皆さん。三回戦です、頑張って行きましょう!」
オレの屈託を余所に、ネフィリカが元気良くオレ達に三回戦の開始を告げた。
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