ドゴスの提案

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 三回戦の相手は『ラチュロウ傭兵団』というらしい。  ここは他の傭兵団が内戦終結を予想し人員削減を行っている現在、そうしたスリム化を一切せず、内戦継続を念頭に置いた傭兵団経営をしているそうだ。  ただ、資金繰りはかなり苦しいようで、今回の武闘大会参加もスポンサー募集の意味合いが強いと聞いた。  あと、出場選手の情報については、このところのオレ達の連戦連勝を考慮して、五人全員を一線級で揃えているとの話だ。  確実にネフィリカやガイウスより実力は上なので、総合的に判断すればオレ達が必ずしも有利とは言えない状況だった。  しかも、三回戦からは闘技場に趣向を凝らした舞台装置等が設営され、様々な歴史的な戦いや事件を再現することになっていた。  今回のオレ達のステージには、闘技場の中央に丘や森を模した障害物や工作物などが建てられ、相手の位置をわからないような工夫がされていた。  前の内戦で起こった大規模な遭遇戦『メントスの戦い』を再現したものらしい。  オレ達は大将のネフィリカを比較的安全と思われる場所に配置し、護衛をヒューに任せた。  さすがに被り物をつけて障害物の中、敵を索敵するのは難しいので、防御に回ってもらったのだ。  まあ、どこから敵が現れるかわからないので、返って守りが強固になって良かったかもしれない。  代わりに前衛に抜擢されたのは、先日の本人の望みどおりガイウスとなった。 「大口を叩いたのだから、実力を見せてくれ」 「…………」  クレイの煽りに答えられないほどガイウスは緊張していた。 「ガイウス、ネフィリカはキースが守っているから安心だよ。だから、オレ達は思う存分暴れるだけでいいんだ。気楽に行こう」  オレが声を掛けると、やっと頷く反応を見せるガイウスに多少不安を感じながら、前進を始めた。
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