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オレ達は三方向に分かれて進み、途中で敵と遭遇すれば、それを倒し、そうでなければ、相手の大将を探し出して勝負をつけるというシンプルな戦法をとっていた。
ガイウスが左手、オレが右手、クレイが中央を進んだ。
障害物や工作物のせいで闘技場は、さながら迷路のようで、敵の位置どころか自分のいる位置さえわからなくなりそうな状況だった。
ただ、観客席からはオレ達の配置が見えているので、行き止まりにはまったり、不用意に敵に近づいたりするのが見えるのが楽しいようで、時折り歓声が上がっている。
オレは障害物の死角に注意しながら慎重かつ速やかに歩を進めた。
「っ……」
曲がり角でオレの鋭敏な感覚が敵の気配を察知する。
模擬剣を構えるとオレは遮蔽物の陰で息を潜めた。
相手がこちらへ踏み込んだ瞬間、物陰から躍り出たオレは模擬剣を振りかざす。
「!」
奇襲を確信したのに、敵は防御体制を取っていた。
何故わかった? オレの知覚は野生動物を超えるほどなのに……。
そうか! 審判か。
通常の試合なら、出場者に付いてまわる審判もこのようなステージでは、さすがに近づけないため、ステージを見下ろすように作られた複数の監視塔からジャッジを行うことになっていた。
おそらく、オレの相手は審判が勝負を見極めるために参加者のいる方向に目を向けていることに目をつけ、その動向によりオレが待ち伏せしていることに気付いたのだろう。
さすがは一線級、侮れない相手だ。
オレは振り上げた模擬剣で打ち合ってから、後方に下がろうとしたが、不意に何の前触れもなく模擬剣がぽきりと折れる。
「え?」
初戦のような無茶をしたら折れるのはわかるけど、このくらいで折れるなんて……。
はっ、そうか! やられた、連中に剣を細工されたんだ。
他にも何か仕掛けがあるかもしれない……どうする、ネフィリカの元へ一旦戻るか?
けど、試合巧者の相手がオレの不利を見逃すわけもなく、怒涛の攻勢をかけてきた。
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