ドゴスの提案

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 ただ、確かに剣先は鋭いが、かわせない攻撃ではなかったし、仮に当たったとしても模擬剣なので、たいしたダメージは受けないだろうと思われた。  でも、万が一にも掠るようなことがあれば、審判に切られた判断され、試合続行不能を告げられる可能性もあるので、受身に徹しているわけにもいかなかった。  オレは何度目かの攻撃を紙一重でかわすと、伸びきった相手の利き腕を掴んだ。  そしてそのまま、怪力に任せて投げ飛ばした。 「うおっ!」  防具を着込んだ屈強そうな男は、まさか自分が小柄な女性に投げ飛ばされるとは思っていなかったようで、受身も取らず背中から地面に落ちた。  衝撃と痛みのために動けない男に近づくと利き腕を踏んづける。たまらず、手放した剣を拾うと相手の首筋に当てると審判を見上げた。  審判は旗を揚げている。勝負がついた判定だ。  オレは相手の剣を構えると次の行動に出る。  防戦に戻るより、相手の大将を狙った方が早いと判断したのだ。  そして、相手から学んだ情報をさっそく利用する。  オレは障害物の上に登ると、監視塔を見つめた。  複数の審判の目がある方向に集中しているのに気付く。  敵はあそこだ、オレはその方向へと走った。  結果的にそれは正解だったけど、相手の思う壺でもあった。  何故なら、敵のチームは前衛は二人のみで、大将を狙ってきた相手を後衛三人がかりで倒すという作戦だったのだ。  まんまと罠に嵌った形だが、不運だったのは誘い込まれたのがオレだったということだ。  クレイやヒューでも苦戦したかもしれないが、あいにくと遮蔽物が多く視界の悪いこの空間は、神速な動きと馬鹿げた打撃力を持つオレにとって、打ってつけな場所だったのだ。  大将を含む後衛三人は、オレの攻撃に全く対応できずに惨敗した。
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