帝国参事会

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 けれど、皇帝遭難の時同じく、近衛軍司令が何者かに暗殺されてしまい、身動きが取れぬまま内戦へと突入してしまったという。  結果、両公国が帝都周辺での大会戦後に停戦を迎えた折に、近衛軍の半分をライノニアが、半分をカイロニアが接収し、それぞれ近衛軍を名乗っている。  つまり、帝国には現在、近衛軍を名乗る軍が二つも存在するという訳だ。  まさしく内戦の生み出した落とし子で、帝国の現状を如実に表した実例と言っていい。  「護るべき帝位継承者がいる現在、近衛軍が帝都にあるのはごく自然なことではありませんか。ついては、可及速やかに帝都に集結し再編成を行う必要があると小官が愚考いたしますが……」  ケルヴィンの提案に列席者から返答はない。  そうか……クレイの言っていたケルヴィンの目的って、このことだったのか。  帝都に近衛軍、つまりは皇女側に固有の戦力を保持する……それがケルヴィンの狙いなんだ。  両公国軍と対等に渡り合うために固有の戦力は必至だ。  皇帝に即位しても武力が無ければ、説得力がないし誰も従わない。  そのための布石という訳だ。  ケルヴィンの奴、自分が宰相になるために本気でオレを皇帝に就けようとしているのか。    オレは奴の執念に身のすくむ思いがした。
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