帝国参事会

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「かつて帝国全土を巻き込む大きな内乱があった時代、時の皇帝ソノドローク一世は乱を鎮めるために軍略に長けた三男と四男をそれぞれ東方大将軍と西方大将軍に任じて鎮圧に当たらせたという記録が残っておる。乱後、その功績を称え、二人を公爵に任じ臣籍に降ろしたのだが、その際に両家へ『帝国にこれあるとき、帝国を守護せよ』と東方大将軍と西方大将軍の職も公爵家へ与えたままにしたという」 「それで……?」 「その公爵家というのがカイル・ライル皇子が継いだアルベルト家・エドワース家なのだ。したがって、お二人は公爵を継いだ折にその将軍職も継いだというわけだ。古文書によると、あくまで非常時における臨時職としてだが、その職位は上将軍より上位と記されており、帝国軍の人事に意見することは当然、軍規に反しない」  今度はケルヴィンが考え込むように沈黙する。 「もっとも、こんな古めかしい話を持ち出すのをわしぐらいなものさ。両公爵様ともご自分が皇帝であると即位した折に帝国軍を指揮下に置かれたからな。そこまで考えてはおらぬだろうよ。ただ、わしはそういう心づもりで軍責を全うしておるのだ」  なるほどと思った。  義理堅い帝国軍人であるアーキス将軍が内乱を助長することがわかっているのに、カイル公爵に仕えている理由がずっとわからなかったからだ。  帝国軍人としての職制を頑なに守ってきたんだと考えると得心がいった。
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