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「パティオ様とは、そんな感じのお話をしました。それで、今まで『あの力』のこと、あたしはずっと嫌いだったんですけど、パティオ様のおかげで少しだけ前向きになれそうな気がしたんです」
なるほど。
パティオはユクを大神殿の手駒にするために洗脳……もとい、説得しようとして失敗したというわけだ。
オレの大事なユクにそんな策謀を働かせるなんて、お仕置きものの話だけど、結果的に良い方向に進んだから大目に見てやろう。
「そりゃ、良かったじゃないか」
オレはユクの決心を曇らせないように肯定する。
「たださ……気持ちは嬉しいけど無理はしないでくれよ」
ユクは真面目な努力家の上に内罰的なところがあるから、無理に頑張ったせいで、後になって落ち込む可能性が大いにあった。
ただでさえ、自己否定感が強く自分をいらない子に思いがちだし、『あの力』のせいで精神的に不安定にもなりやすい。
オレのために役立とうとしてくれるのは嬉しいけど、ユクがそのために苦しむ結果になるのは避けたい。
「ユク、それと一つ約束して欲しいことがあるんだ」
「何ですか?」
「友達や知り合いの心は、なるべく読まないようにして欲しいんだ」
そうしないと、きっとそれはユクの心を病ませる原因となるだろう。
知らないなら知らなくて良いことは、親しい間柄にこそあるのかもしれない。
「はい……そうしますね」
少し考え込んだユクは、すぐに得心がいったのか笑顔で答えた。
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