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一方で、時の為政者側が流浪の民を警戒し、迫害してきた歴史もまたよく理解できる。
彼らは、従順で無学な臣民には決してなれなかったからだ。
クレイやシンシアを見れば、その危惧も正しかったと言えるかもしれない。
「ですから、私など一族の者から見たら、勉強中の身で未熟者もいいところです……ただ」
シンシアはオレに真っ直ぐな視線を送ると続けた。
「今まで学んできたことが、お役に立てるのなら望外の幸せです」
一瞬、ちょっとうるっときて、オレは言葉に詰まった。
「その……ありがとう」
「いえ、リデル様。感謝の言葉を述べる気持ちがあるのなら、勉学に勤しんでください。貴女様こそ、まさしく王のごとくあらねばならないのですから」
シンシアの金言はいつもどおり手厳しかった。
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