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「それは言えません」
理穂の態度が再び硬くなるのを察し、私は温和な声で語りかける。
「そうね。余計なことを聞いてごめんなさい。私、本当は理穂さんが羨ましいの」
「私が羨ましい? 冗談は止めてください」
「ううん、本心よ。理穂さんには翔君がいる。子供ってやっぱり、何よりも大切な存在だと思うの」
「…………」
キッチンで向き合ったまま、私たちの立ち話は続いていた。
理穂は完全に台所仕事の手を止めている。
「今の私には翔がすべてです。翔のためにもお金は欲しいし、周りから蔑まれようと、生活を立て直すのに必死ですから」
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