第18章・罠

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夫がその旅を提案した時、「素敵ね」とウットリした自分も思い出した。 いつまでも仲良く一緒に年を重ねて、お爺ちゃんとお婆ちゃんになったら桜の旅をする。 なんてロマンチック……と、当時は感じたのだ。 私が昔を思い出してぼんやりしていると、夫はしんみりとした声を出す。 「九州から北海道までは無理だけど、どこか日常を離れた場所で桜を見たいんだ」 「…………」 「旅が終わったら別れよう。お互いの幸せを願いながら、別々の道を進もう」 「一緒に桜を見るのは嫌じゃない。でも、泊まりになるの?」 やはり、そこが引っかかるのだ。
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