第18章・罠-2

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決別の言葉を聞いた夫は、離婚届やお金を入れる封筒と袋を私に差し出した。 「由布香も元気で。もし万が一、俺のことが必要になったら、いつでも連絡していいから」 「連絡することは絶対にありません。お金は慰謝料として頂いておきます」 私は事務的に告げ、此処を出る支度を始めた。 「まさか寝ずに今から帰るのか?」 「この部屋じゃ眠れないから。部屋を変えるか、タクシーで帰ります」 何か言われるかと思ったが、夫は悟った顔になり、黙ってバルコニーの方へ進んだ。 私が帰り支度をしている間、夫はずっと私に背を向けたまま窓から外を眺めていた。
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