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「本当にいいんですか? 陽生さんに確かめなくて」
電話の向こうで景太が言った。
私はアパートの部屋でカーペットに座って壁にもたれ、だいぶ大きくなったお腹をさすりながら景太の声を聞いていた。
「気になるなら、陽生さんに確かめてもいいと思いますよ」
「連絡はしない。事実だったら、私からの連絡なんて迷惑だろうし」
「でも事実じゃなかったら?」
「それでも同じよ……。私たちは終わったの。陽生君もずっと連絡してこないし、陽生君の中でも終わったのよ」
窓越しに見える夜空には丸い月が浮かんでいた。
ネオンの少ないこの町では、月も堂々として見える。
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