第四話:シンの過去

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そわそわと落ち着かずに時計を見ると、あと十五分程で約束の時間になるところだった。 少し早いけれど、部屋にいてもウロウロとするだけなので、ダイニングルームへ向かうことにした。 シンと食事。 それがこんなにも緊張することだなんて思ってもみなかった。 一度も一緒に食事をしたことがないのも理由だと思うけれど、たぶん本当の理由は違う。 「あっ」 ドキドキしながらダイニングルームの扉を開くと、すでにシンの姿がそこにあった。 初めてトレジャーランドを案内してくれた時に着ていたようなラフな格好で。 「来たか」 窓際で外を眺めていたらしいシンは私が入ってきたことに気が付くと内線電話を掛けた。 「そこに座れ」 指示された席に着くと、計ったかのように食事が運ばれてきた。 毎日食べているホテル食だけれど、飽きることもなく毎回感動する。
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