第四話:シンの過去

3/32
前へ
/195ページ
次へ
「食べていいの?」 「どうぞ」 「いただきまーす」 テーブルに並べられた豪華なディナーを前に我慢出来ず手を合わせると、シンが右の口角を上げてフッと笑った。 その笑い方に、胸がキュッと反応してしまう。 だって、シンの笑った顔なんて呆れた笑いかバカにした笑いしか見たことなかったから、まさかマコトさんみたいに笑えるなんて思ってもみなくて。 「何だ?」 「べ、別に」 ワイングラスに口をつけながら不愉快な様子で眉を寄せるシンから、慌てて視線を外す。 ……シンがマコトさんに見えた。 顔は同じなんだからマコトさんに見えても当然と言えば当然だけど、今までそんな風に見えたことなかったから。 マコトさんはマコトさん、シンはシン。 双子を見分けるようにちゃんと違う人に見えていた。 それなのになんで――。 そう思って再びシンに視線を戻した時だった。
/195ページ

最初のコメントを投稿しよう!

374人が本棚に入れています
本棚に追加