第四話:シンの過去

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――ドーン! 大きな音と共に窓いっぱいに広がったのは、真っ暗な空に鮮やかに浮かび上がった花火。 「うそっ!花火!?」 カチャンと握っていたフォークを投げ出し、窓に駆け寄ってへばり付くように空を見る。 すると、ヒュルヒュルと一筋の火花が上がってきて、ドンと大きく弾けた。 「……きれい」 「夏限定トレジャーランドのイベント、週末の打ち上げ花火。今日は初日だから問題がないか確認だ」 そう言って、私の隣に立ったシンも私と同じく空を見上げた。 遮る物が一切ないこのホテルの最上階は、花火を観賞するには打ってつけの特等席だ。 「すごい……私、花火をこんな贅沢な場所で見たことないよ」 「だろうな」 「きれー……」 シンの嫌味も耳に入らないくらい、目の前に広がる花火に、私はしばらく魅入っていた。
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