第四話:シンの過去

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「夏限定の週末イベントってことは、毎週花火が見られるの?」 「あぁ。雨天時は中止だがそれ以外は八月いっぱい毎週行われる」 「私……ここで毎週見てもいい?」 「別に俺の許可は要らないだろ。百合が食事をしにここへ来て花火が打ち上げられても、見るなとは言わない」 凄すぎる……。 こんな贅沢なことがあってもいいのだろうか。 そう思いながら、再び打ち上がった花火を見て、何度も口にした感嘆の声を上げた。 「――百合、食事しながら見ろ。冷めるぞ」 「あ、うん」 食事を中断してずっと窓にへばり付いていた私を、いつの間にか席に戻っていたシンが視線で促した。 大人しく席に着き、食事を再開しながら次々に打ち上がる花火を観賞する。 「わぁ……今の初めて見た!すごい……なんか今風って言うか現代風の花火だった」 口に運びかけたヒレ肉を戻しながら興奮気味に感想を述べると、シンがフッと声を上げて笑った。
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