第四話:シンの過去

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窓枠をくるりと指で差したその中に、再び花火が大きく開いた。 「マコトさんが外に出てる時?」 「そう。自分の意志とは関係なく動いて喋って。それがこんな風に視えるようになって初めて、俺が普通とは違うことに気が付いた」 「そこで人格障害だって分かったってこと?」 コクンと頷いたシンが、何かを思い出すように視線を斜め上にずらした。 「幼い頃の記憶もあるのにそれは全部マコトのもので、俺はあの時にマコトに作られただけの存在だった」 なんて言っていいのか分からず、テーブルの下でスカートをキュッと握りしめた。 シンは確かに存在しているのに、作られたものだなんて……そんなこと考えたことがなかった。 私は冴子さんに協力して、マコトさんの治療に役立てばいいと思ってきたけれど、もし人格障害が治ることがあればシンは消えてしまうということなのだろうか。
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