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「……ねぇ……私は、シンを救える?」
救えるなんて別に本気で思ってない。
私にあるのは、触れたら人格の強制交代が出来るという使えるような使えないような力だけ。
それでも、シンの傍に居ることで何か力になれることがあるのなら、例え私が苦しんだとしても助けてあげたい。
そう思ったのだ。
「……お前ってやつは」
「ああっ!」
頭に乗せられていた手がぐしゃぐしゃと、髪をかき混ぜる。
乱れた髪を直しながらシンを見上げると、目を細めてフッと笑った顔がマコトさんと重なって胸が苦しくなった。
「あ」
そんな私の心の内を表すかのように、夜空を彩る花火はクライマックスが近いのか、ドンッドンッと競うように打ち上がる。
花火の色に染まるダイニングルームは混沌としていて、お世辞にもキレイとは言えなかったけれど、私もシンも終わりの近い花火にしばらく口を閉ざしていた。
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