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「生憎(アイニク)そんなものに付き合うほど暇じゃないので」
「ちょっと待っ――ッ!」
馬鹿にしたように私を見下して去って行こうとする彼に無性に腹が立って、彼の腕を掴んだ時だった。
あの時と同じようにバチッと弾かれるような衝撃があったあと、彼の動きが停止した。
驚いて固まってしまった私を押し退けるようにして女性が彼に駆け寄る。
「副社長!どうしました?」
「……ふ、副社長?」
「あなた……彼に何をしたんです?」
眉を寄せた彼女は、副社長と呼んだ彼の体に両手を添えながら、私が何か持っていないか探るように視線を彷徨わせた。
焦った私は何も持っていないことをアピールするように両手を振って見せる。
すると、彼が正気を取り戻したのか瞳がゆっくりと開かれ、彼女が私から視線を戻した。
「副社長!」
「……っ、あ、冴子(サエコ)さん?」
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