第四話:シンの過去

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「いつでもどうぞ」 そう言って目を閉じたシンに、どうしたらいいのか分からなくなる。 好きでもない人とキスするの? いや、これは実験なんだから気にすることない。 二つの思いが頭の中でぐるぐると廻る。 けれど、その答えに決着がつかないまま、私の体は引き寄せられるようにシンの唇へと近づいていった。 「…………」 でもあと一歩、勇気が足りないのか理性が働いているのか、唇に触れることは出来ない。 キスしやすいように顔の角度も変えているというのに、この先へ進めない。 「実験しないのか?」 「……ちょっと待っ――」 躊躇っている私の後頭部をがっしりと掴んで引き寄せたシンが、唇を合わせて私の言葉を封じた。 ふに、とした柔らかい感触に胸がバクンと跳ねる。
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