第四話:シンの過去

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キスをされたんだ、と気付くのには少し時間がかかった。 離れていく唇を視線で追うけれど、驚き過ぎた私の体はフリーズしたまま動かない。 そんな私を見下ろしながら、シンが唇に指を押し当てた。 「この余韻をマコトに味わわせる訳にはいかないだろう?」 「――ッ」 妖艶に笑ってダイニングルームを出て行ったシンに、体がカアッと熱くなる。 どういう意味……? 今の、どういう意味!? 余韻をマコトさんに味わわせたくないって、シンが私とのキスを特別視してるということだろうか。 「……そんなわけ……ないか」 きっとシンのことだから私をからかって今頃、あいつの顔面白かったな、なんて楽しんでいるに違いない。 そう思ったら、やっぱり悔しくなった。 いつかシンの動揺する姿を見てやる!と心に決めて、私もダイニングルームをあとにした。
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