第四話:シンの過去

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***** 翌日、出勤準備をする私の部屋に内線電話のベルが鳴り響いた。 受話器を持ち上げると、電話の声の主はシンで胸がトクンと反応した。 『今日は普段着で出勤して来い』 「え?普段着でいいの?」 『遊園地の巡回に行くからな。浮きたいならスーツでも構わないぞ』 なら最初からそう言えばいいのに。 シンは簡潔に話を済ませるきらいがあるので、理由を知りたければ自ら突っ込んで聞かなければならない。 「……てか、昨日のキスについては何もなし?」 切れた内線電話に向かってそうため息を吐いた。 私ばかりがドキドキさせられて本当に馬鹿みたい。 今まで何とも思ってなかった相手でも、告白されたら意識してしまうとはよく聞くけれど、キスも同様だ。 シンとのキスが頭からなかなか離れず、実はほとんど眠れなかったのだ。
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