第四話:シンの過去

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鏡とにらめっこしつつ、目の下に出来てしまった隈をコンシーラーで必死に隠す。 シンが何も反応しないのなら、私も動揺を見せるわけにはいかない。 「よし」 しっかりとメイクを施して、いつものスーツではなく普段着に袖を通して副社長室へと向かった。 コンコンとノックをして入ると、シンはすでに席に着いて書類とパソコンを交互に見ていた。 「おはようございます」 いつもの挨拶をした私を横目でチラと確認したシンは、無言で書類を片付けて席を立った。 「行くぞ」 「かしこまりました」 シンも私もいつも通り。 いつも通りじゃなかったらなかったで、気まずい雰囲気になるのは嫌なんだけど。 「遊園地の巡回は初めてだからちょっと楽しみ」 二人きりのエレベーターで砕けた口調でそう告げると、シンがフッと笑った。
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