第四話:シンの過去

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謝りたいと言っているのだから悪いことではないだろうと思い、ベンチの彼の元へと足を向けた。 「初めまして、高月と申します」 名刺入れから一枚名刺を取り出して彼に渡すと、彼はベンチから立ち上がって受け取り、 「僕は北川(キタガワ)です。なんか突然すみません」 と、ペコペコ頭を下げた。 かなり低姿勢だけれど、人柄の良さが滲み出ていてすぐに好感が持てた。 ベンチに再び腰掛けるよう促し、私もその隣に座って視線をシンと彼女の方へ戻す。 「トレジャーランドの副社長さんだそうですね、彼」 「それは瞳さんから?」 「はい。実は僕……瞳にプロポーズしたんですが、待って欲しいと言われまして」 プロポーズを保留したのは、彼女がシンに謝りたいと言ったことと関係しているのであろう。 北川さんは持っていたカップコーヒーに口をつけて一呼吸置いた。
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