第四話:シンの過去

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瞳さんの二股の相手はきっと、マコトさんのことだろう。 シンの“見ている前で”というのは、マコトさんの中でシンが“視ていた”のだ。 瞳さんが謝りたいと言ってることから、人格障害自体は知っていたけど二人の間に何かがあって、マコトさんともそういう関係になってしまったのかもしれない。 「副社長さんは許してくれると思いますか?」 「……どうでしょうか」 「許してもらえなかったら僕のプロポーズは失敗ってことになりますかね」 二人の行く末を見守っていた北川さんが、ハァと深いため息を吐いて肩を落とした。 何か慰めの言葉でも掛けてあげるべきなのかもしれない。 でも私は、せっかく封印していた過去の傷を突然えぐられたシンの方が心配だった。 瞳さんのこの行動はただのエゴ。 “謝りたい”のも“許してもらいたい”のも、自分が楽になりたいだけで、シンの気持ちも北川さんの気持ちも無視している。
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