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シンの気持ちを考えたら、二度と姿を現さない方が良かったし、北川さんの気持ちを考えたら、相手が知りたがってもいないのに自分の過去の恋愛なんて話すべきじゃなかった。
でも、人間なんてそんなものかもしれない。
相手の為だと言いながら、本当は自分が救われたいのだ。
私も田辺さんの件でそれは痛いくらい思い知った。
「……あ、」
二人はどうやら話がついたようで、私を見て腕を組んだシンを残して、瞳さんが目元をハンカチで拭いながらこちらに向かって歩いてきた。
ベンチからスッと立ち上がった北川さんが、瞳さんに駆け寄って肩を抱き寄せた。
ここだけ見ると、シンが瞳さんを泣かせたように見えるけれど、たぶん泣きたいのはシンの方だろう。
私もベンチから立ち上がり、二人の横を会釈して通り抜け、シンの元へと歩みを進めた。
「あのっ」
しかし、涙声の瞳さんに呼び止められ、くるりと振り返る。
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