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北川さんに守られるように肩を抱かれた瞳さんが、目元を押さえていたハンカチをギュッと握りしめた。
「シンのこと……よろしくお願いします」
まるで身内かのような彼女の口ぶりに、せっかく押し込めていた苛立ちが溢れる。
たぶんこのまま口を開けば、彼女を罵るような言葉が飛び出てしまうだろう。
だから私は、スゥと深呼吸をして苛立ちをため息と共にハァと吐き出した。
「これで北川さんと結婚出来ますね?どうぞお幸せに」
少し残ってしまった苛立ちが出てしまったけれど、これくらい許されるだろう。
私は瞳さんの答えは聞かずに体を翻し、シンの元へと急いだ。
「――悪かったな、知らない男の相手をさせて」
「いえ」
彼女がシンにした仕打ちを思うと心配だったけれど敢えて口にせず、いつも通り斜め後ろをついて歩く。
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