第四話:シンの過去

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「……シンにも本音を話せる相手が出来たらいいのにね」 「本音?俺はいつも思ったままのことを話しているつもりだが?」 「あー違う違う。本音って言うより……あ!弱音!弱音を吐ける相手がいたら少しは楽になれるのにな、って思っただけ」 私の言葉に腕を組んで考え込むように立ち止まってしまったシン。 そんな難しい話ではないのに、シンにとっては難しいのだろうか? 「弱音なら吐いてるじゃないか」 「え?あ、冴子さん?」 フルッと首を横に振ったシンは、私の額に人差し指を当てて軽く小突いた。 「お前だよ。百合には弱音、吐いただろ」 「――ッ」 キュンと胸が絞られるように反応すると同時に、顔がカアッと赤くなった。 ……いつ? シンが弱音なんて吐いてた? それも……私に? そう思えば思うほど、胸の鼓動は激しくなるし顔の赤みもどんどんと全身に回って行く。
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