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この人は彼の態度が一変した理由を知っている人なのだと確信し、私は「はい」と答えた。
すると、彼女は考えるように口元に手を当て、しばらくすると彼の方に向き直った。
「マコト、彼女を今晩の食事に招待したらどう?」
「え?あー、そうだね。僕また迷惑掛けちゃったみたいだし……」
彼は私を見て「良かったら」と優しく微笑んだ。
その笑顔が昨日書類を拾ってくれた時と重なり胸がドキンと揺れて、私は引かれるように彼のあとをついて行った。
*****
「……す、すごい」
彼のあとについて行った先は、この複合商業施設の一画であるホテルの最上階。
乗せられたエレベーターもこの最上階直通のものらしく、他の階のボタンが見当たらなかった。
あまりの事にキョロキョロと落ち着かない私に、彼が「ここで待ってて」と一つの部屋へ案内してくれた。
そこはたぶん……だけれど、ダイニングルーム。
真っ白なクロスが掛けられたテーブルが広い部屋の中央にポツンと置かれていて、壁に高価そうな絵が飾られている以外特に何もない。
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