第五話:マコトの想い

2/15
前へ
/195ページ
次へ
セミが残された生命(イノチ)を放出するように鳴く季節が終わりに近付く頃、僕はひどい頭痛に耐えていた。 こんなにひどい頭痛は中学生の時以来だ。 「――っ」 ズキンと痛むと言うより、ドクンと血管が激しく伸縮しているようなそんな痛み方に眉を寄せる。 「マコトさん?どうしたんですか?」 副社長室という同じ空間にいる彼女に悟られまいと気を張っていたつもりだったが、耐えきれず漏れたうめき声に彼女が気が付かないはずもなかった。 ガタンと椅子から立ち上がり、慌てて僕の傍に駆け寄ってくる。 ふわりと漂った彼女の香りに幾分か頭痛が和らいで顔を上げると、心配そうに眉を下げた彼女と視線が絡んだ。 「……大丈夫」 「とても大丈夫そうには見えません!どうしたんですか?言ってください」 心配からか少し声を荒げた彼女は、僕の肩に手を置こうとしたけれど、ハッとしたようにその手を引っ込めた。
/195ページ

最初のコメントを投稿しよう!

374人が本棚に入れています
本棚に追加