第五話:マコトの想い

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「でもっ」 「大丈夫だから」 真っ青な顔で狼狽する彼女を少し気の毒に思いながらも、引き出しに入っている頭痛薬を取り出して口に含む。 しばらくすれば薬が効いて落ち着いてくるだろう。 フゥと深呼吸をし、心配そうな彼女に笑顔を向ける。 「……次そんな状態になったら構わず冴子さんを呼びますからね?」 歯医者に行きたくないと言っている子供を叱るような彼女の言い方に、僕は降参するしかなかった。 それからしばらくして、薬のお陰か頭痛が治まった僕に、百合音さんが安堵の表情を見せた。 「もう大丈夫ですか?」 「うん、心配掛けてごめん」 「いえ。マコトさんが大丈夫ならもういいです」 ふわりと笑った彼女の笑顔に胸が弾む。 こんな感情は久しぶりかもしれない。 僕が病気になったのは中学生くらいの時で、あの頃は異性を意識するなんてまだまだ早いと思っていた。
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