第五話:マコトの想い

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思春期を過ぎ大人になってから気になる異性は出来たけれど、やはり病気が障害となり告白することすらなく、ものすごい早さで時は流れていった。 そんな中、もう一人の僕であるシンに彼女が出来、知らぬ間に僕は一通りの“コト”を終え、憤りを感じていた。 僕の体なのにどうしてシンが自由に使えるのだろう、と。 「少し休憩しようか」 「そうですね、じゃあお茶煎れてきます」 僕自身が作り出した人格に怒りを覚えるのはおかしな話かもしれないが、自分に出来なかったことを事も無げに済ませるシンは、僕にとってライバルのような存在だった。 「どうぞ」 お茶を煎れて戻ってきた百合音さんに「ありがとう」と笑顔を向けると、彼女はポッと顔を赤くして照れ隠しに自分のカップに口をつけた。 そんな仕草さえも僕の胸を弾ませるには十分だった。 ――僕は、百合音さんが好きだ。
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