第五話:マコトの想い

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「百合音さん」 「はい」 「今日はトレジャーランドの花火、最終日ですよね」 「あ、はい、そうですね」 もう八月も終わりなんですね、と呟いた彼女はどこか憂いを帯びていた。 「花火……一緒に見ませんか?」 僕の誘いに驚いたのか、百合音さんは目を丸くし、少ししてからフッと力を抜くように笑った。 「最終日はマコトさんと見れるなんて……何か不思議」 百合音さんのその言葉に胸にモヤが掛かる。 “最終日は”“不思議”。 もしかしたら、いやもしかしなくても彼女はすでにシンと花火を見ているのだろう。 いつの間に百合音さんとシンは二人で花火を見るまでに仲を縮めていたのか。 僕の知っているシンは人を寄せ付けず、冴子さん以外の人間とは決して二人きりになったりしなかった。 今までに二人きりになったと言えば……恋人が出来た時くらいで。
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