第五話:マコトの想い

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見納めですね、と窓の外に視線を移した彼女の横顔を盗み見る。 僕がこれだけ惹かれている女性だ。 シンは僕以上に彼女と過ごしている時間が長いのだから、好意を寄せていたとしても何らおかしくはない。 「さて、今年最後の花火をマコトさんと見るためにさっさと仕事終わらせますか」 ぐっと伸びをして、空になったお茶を手にデスクへ戻っていった百合音さん。 胸のモヤは晴れないけれど、僕と花火を見ることを楽しみにしてくれている彼女の気持ちに偽りはないと、シンとの関係は考えないことにした。 ***** そして、夜。 私服に着替えてダイニングルームに現れた百合音さんは、気張っていない自然な雰囲気が醸し出されていて、胸が再び弾んだ。 今日、花火に誘ったのは自分の気持ちを伝えるためだ。 その緊張も含めて、僕の心は激しく揺れていた。
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