374人が本棚に入れています
本棚に追加
「お待たせしました」
そう言って部屋に入って来たのは彼ではなく、冴子さんと呼ばれた彼女。
右手にノートパソコンを抱え、とても食事をしに来た雰囲気ではなかった。
「突然お誘いして申し訳ありません」
「い、いえ」
「遅くなりましたが私はこういう者です」
流れる動作で名刺を差し出す彼女に慌てて両手で受け取り確認する。
“COO Assistant Saeko Sakuma”
アルファベットの羅列に一瞬目眩がしたけれど、じっと見つめて読んでみる。
「しーおーおー……あしすたんと?」
「副社長付きの秘書、と言ったところです」
「ひ、秘書さん、ですか」
言葉の意味を理解すると再び頭がクラクラとしてしまう。
もしかしなくても、彼はこの複合商業施設の副社長で、彼女はその秘書ということなのだろう。
最初のコメントを投稿しよう!